収穫は、暑い盛りの8月22日(金)に白ワイン用品種の「シャルドネ」からスタートしました。シャルドネに続き「信濃リースリング」「ソーヴィニヨン・ブラン」「プティ・マンサン」、赤ワイン用品種では、「メルロー」「マルスラン」「シラー」「マルベック」「プティ・ヴェルド」「カベルネ・ソーヴィニヨン」と続き、最後に「ヤマ・ソービニオン」の収穫が10月18日(土)に終了。このほか、試験用品種も合わせると全21品種のぶどうの収穫が行われました。

本記事では、今年の収穫の振り返りとともに、「信濃リースリング」への新たなサポートと、「こだわりの選果」、そしてぶどうの「熟度をみながらベストなタイミングで収穫する難しさ」についてご紹介いたします。


2025年の収穫の振り返り

写真はシャルドネ

今年も無事に全てのぶどうを採り終えることができました。収穫はぶどう栽培において1年の集大成となりますが、どんなにぶどうの樹が順調に成長していても、収穫直前に大雨や台風などの自然災害の影響を受ける可能性があるため、栽培スタッフは皆、最後まで健全に収穫できるかどうか、常にハラハラと心配を抱えています。

今年は雨が少なく晴天にも恵まれました。果実は糖や酸のバランスが良く、味が凝縮。色づきも良い年でした。この良質なぶどうで造られたワインは1~3年後に製品となり味わうことができますが、2025年のぶどうはビッグヴィンテージの期待ができるのではないか、と今からワクワクしています。


信濃リースリングに施した新たなサポート

花かすトントン

信濃リースリングでは、栽培過程で今年新たに施したサポートがあります。それは「花かすトントン」と「ブロワーによる花かすおとし」。信濃リースリングは品種の特性として、本来自然に落ちるはずの花かす(開花後にぶどうの粒に残る花冠(かかん)のこと)が落ちにくい性質があり、それが病気の原因の一つになっていました。

人の手でサポートすることで、花かすを落としてあげようというのが「花かすトントン」です。 タイミングは結実を迎えた直後。房に付いている花かすや結実不良の小さな実を、樹の幹をトントンと優しく数回たたき、その振動で落していきます。

ブロワーによる花かすおとし

「花かすトントン」では落としきれない、房の中に入り込んでしまった花かすを、空気に圧力を加えて風を送り出す「ブロワー」を使い、風の力で吹き飛ばす作業のことを、その名前をとって「ブロワー」と呼んでいます。強すぎない適度な風圧に調整し、房に満遍なく風を当てていきます。スタッフを見ていると、風で房を洗うかのような滑らかな動きで優しく花かすを落していきました。この段階で花かすを除去することで、デリケートな信濃リースリングの病気リスクを軽減し、健全な成長へと導くことが狙いです。

これらのサポートは、これまで多々ある作業スケジュールの中に組み込むのが難しかったのですが、今年はひとつ前の作業である「グレープガードのビニール閉じ」の効率化がさらに図れたことで、この時間を作り出すことができました。

その結果、以前と比べて病果をかなり減らすことができ、健全な状態で収穫期を迎えられました。

収穫直前の信濃リースリング


こだわりの選果

収穫の際には、畑で同時に選果も行います。(※選果とは手摘みした房の中にある、未成熟果や腐敗のある実をひと粒ひと粒取り除く作業のこと。)

選果はすべての品種に行っていますが、ハイクラスワインに仕上げるぶどうは、徹底した管理のもとで高度な選果が行われます。そのぶどうは「メルロー」、「シラー」そして「カベルネ・ソーヴィニョン」の3品種。

赤ワイン用ぶどうの色づきは、ここ数年の努力と工夫で少しずつ良くなっており、黒ぶどうの名のとおりしっかりとした「黒」の房が増えてきました。しかし、全ての房が「黒」ではないので、その中からさらに選りすぐりの「黒」を取り出すため、3段階の選別が行われています。


第1の選別

収穫前に畑で樹ごとに房の色を判断。「黒い房をもつ樹」、「やや薄い色の房をもつ樹」(※選別時には薄めの房を「赤」と呼んでいます)を見分け、樹に印を付けておき「黒」と判断された房をもつ樹のみを収穫します。


第2の選別

収穫したぶどうを光量の安定した室内に運び入れ、そこでひと房ひと房色分けをします。一見黒に見える房も、少しでも色みの薄い房の場合は、「黒」ではなく「赤」として別に分けます。

さらに黒と判断された房も、粒単位で色のチェックをし、色の薄い粒は取り除きます。この色の判断はとても難しいものです。黒なのか赤なのか。経験が必要な作業となります。また、色の判断と同時に未成熟の小さな実や病果も細かく徹底除去し、黒い房に仕上げます。

スタッフ全員で朝から一日中ずっと選果、時には夜まで選果と長時間の作業が続きます。特にメルローは、赤ワイン用品種の中では最も収量が多いため、十数名で行っても数日かかります。

こうして、栽培スタッフが懸命に取り出した黒い房は、醸造チームに託されます。


第3の選別

醸造チームは、栽培チームから託された赤ワイン用ぶどうを仕込む際、除梗(「じょこう」※房の茎部分を取り除くこと)を行いますが、その際わずかに入り込んでしまった梗(茎の部分)や、未熟果を取り除くため、選果台にてさらなる選果を行います。

味わいや風味の妨げになる梗の苦みや青臭さを、わずかでもワインに残さないようにするためです。

このように、手間と時間をかけ徹底した選果を行い、色の濃い黒ぶどうだけを選び抜くことで、上質な味わいのワインに仕上がっていくのです。

また、色づきが薄く、畑の選別で「赤」と判断されたぶどうは、他の品種と混醸し、ブレンド用として醸造されています。


ベストなタイミングで収穫する難しさ

以前に紹介した「ぶどう栽培の集大成 収穫」という記事でも触れていますが、収穫は、「果汁分析」によって、糖度や酸が狙った値になったタイミングで行います。しかし、そこにはデータだけでは測れない「熟度」というものがあるそうです。

「熟度はどうやってみるのか」。訪ねてみると、「梗(ぶどうの茎)の色や木質化、実の張り具合、房まわりの葉の色、種の色、味、香りでみるんだよ」と。これらの要素を一通り見た上で熟度がベストかどうかを判断しているそうです。

※果汁分析…ぶどうの品種ごとに糖度と酸度、そしてpH値(酸性・中性・アルカリ性度)などを計測すること。品種ごとかつ畑ごとに分析し、収穫のタイミングを見極めるまで毎週行う)


「じゃあ、そのタイミングで収穫すればいい」という簡単な話ではありません。畑では主要品種で10品種、試験用品種まで含めると21種を栽培しているため、収穫するには順番を考えなくてはなりません。

果汁分析と熟度の見極めとともに、どのぶどうから収穫すべきか、天候も気にしながら探っていくのです。しかし「今が採り時」というのは、白品種同士でも、白品種と赤品種でも、赤品種同士でも重なってきます。

「収穫するベストなタイミングと言っても、難しさはある。判断を間違えると、ぶどうの健全性が保たれなくなり、病気も発生するかもしれない。そんな中天気が崩れれば、状況は一転し収量にも影響が出て来る。


だから、この畑の収穫に何日かかるのか、選果にどれくらいの時間が必要か、順番を待つぶどうが健全な状態で耐えてくれるかどうか、天気はもつか、醸造スケジュールは大丈夫か。あらゆる条件を全て見据えた中で、慎重にベストなタイミングを見出している。」と栽培家は言います。

この判断は、毎日ぶどうを見守り、熟練した経験をもつ栽培家だからこそできることであり、その後のワイン造りにも大きく影響をもたらす重要なものとなります。


まとめ

その年その年で、天候もぶどう樹の成長も熟期も変わります。作物を育てるのですからそれは当たり前のこと。どんな状況であっても品質を守るために、不利な環境や条件になった時の対応力と判断力が大事であり、そのどちらも日々ぶどうと向き合う中での経験と備えがあって乗り越えられるものだと思います。


今年の収穫も、時間に追われる場面もありました。しかし、信濃リースリングへのサポートなど、毎年進化する取り組みや先の先まで考えた備えによって、無事に収穫を終え全てのぶどうの仕込みも完了しました。


2025年のヴィンテージワインがリリースされるのは、白ワインは早くて2026年、赤ワインはもう少し先になるかと思います。どんな味わいのワインに仕上がるのかとても楽しみです。伊豆ならではのテロワールを感じるワインを多くの方に飲んでいただけるよう、リリースされた際には随時ご紹介していきますので、是非チェックしてみてください。