ワイン好きの方の中には、「マルスラン」という品種名を聞いたことがある方も多いのではないかと思います。日本では最近育てられるようになり、続々とワインがリリースされるようになりました。中伊豆ワイナリーでもマルスランのワインを造っていますが、しっかりとしたコクのある味わいに仕上がっています。中伊豆ならではの味わいをぜひお試しください。
未知の可能性を秘めた、期待の新星「マルスラン」
ワインをこよなく愛する方の中には、マルスランというぶどう品種をすでにチェックしている方もいるかと思います。
耳慣れないこのぶどう品種は、比較的新しい交配品種で、カベルネ・ソーヴィニヨンとグルナッシュを掛け合わせて1961年にフランスで生まれました。
フランス国立農学研究所(INRA)への品種登録も1990年と、世界的に知られるようになってからまだ35年ほどしか経っていない品種です。
特徴としては、果皮が厚くて小粒のため収量は少なく、なめらかで口当たりの良いワインが生まれ、黒い果実や赤いベリーなどのアロマと、スパイシーな風味が感じられ、ほどよい酸味のフルーティーなワインができあがります。
ワインの本場でもあるフランスのボルドー地方では、2021年からマルスランの栽培・醸造が認められるようになりました。
これは気候変動による温暖化が原因で、これまで栽培していた品種だけではボルドーらしいワインができなくなる可能性があるため、これを補う品種として6品種を追加しており、そのうちのひとつがマルスランでした。
ボルドーの品種として認められたものの、栽培や醸造で使用されるマルスランの量は限定的で、栽培面積は5%まで、ブレンド比率も最大10%までと法律で定められています。
しかし、期待されている新たな品種として、フランス南西部や中国などでは、マルスラン100%のワインが造られています。
できあがるワインは黒みがかった紫色で、黒や赤の果実の香りとスパイスの香りがするフルーティなもの。
中伊豆ワイナリーで栽培・醸造したマルスランは、まだ本数は少ないのですが、マルスランならではの個性を持ちながら、中伊豆の暖かな太陽を写し取ったようなワインに仕上がりました。
ほどよい酸味と渋み、やわらかな口当たりで、ラズベリーやブルーベリー、ブラックベリーといった、赤や黒の果実のジューシーさと、シナモンやクローブといったスパイスの風味、樽由来のチョコレートやアーモンドの香りが重なり合い、ビターチョコレートのような余韻が残ります。
今飲んでもおいしく楽しめますが、セラーで5~10年寝かせることで、さらに複雑な味わいのワインに変化する可能性もあり、まだまだ未知の部分が多いワインです。
ラザニアやラグーソースのパスタ、仔羊や鴨などのジビエ料理、ソーセージと白インゲン豆を煮込んだフランスの郷土料理であるカスレなど、しっかりとした肉料理とともに楽しみたくなる味わいです。
ちょっとしたごちそうとともに、初めての味わいをぜひお楽しみください。
2022年のぶどうの生育について
2022年は比較的雨の多い天候でしたが、春の気温が高かったため、ぶどうの樹が休眠から覚めて動き出すのが早かった年です。
雨が多かったため一部のぶどうには黒痘病が発生しましたが、6~7月の梅雨の時期は雨天が少なく、雨量も少ない状態が続きました。
8月の熟期はやや雨量が多いものの、順調にぶどうの生育が進みました。
2022年のワイン造りについて
ぶどうを収穫し、除梗後に発酵槽全体が回転するタイプの発酵槽に入れ、ワイン造りを開始しました。
タンニンの抽出を促進し、高いアルコール耐性を持つ、ローヌ系の酵母を使用して発酵を行い、上白糖を使って24度を目安に補糖。
2回ルモンタージュを行い、発酵終了後にプレスし、マロラクティック発酵を行いました。フレンチオークの樽で12ヶ月樽熟成を行い、バレルセレクト。
澱引きを兼ねて樽だしした後に軽めの濾過をかけて瓶詰めしました。
テイスティングノート
黒みがかった濃いルビー色のワインは、ラズベリーやカシス、ブルーベリー、ブラックベリーなどの黒や赤の果実の香りに加え、シナモンやクローブのようなスパイスの香りが感じられる。樽由来のチョコレートやアーモンドのような香りと、ほどよい酸味と渋み、口当たりはまろやかでやわらか。ビターチョコレートのような余韻が残る。
今飲んでも十分おいしいが、5~10年熟成させると複雑性が増すだろう。合わせたい食事は、ラザニアやラグーソースのパスタ、鹿や仔羊、鴨などのジビエ料理、カスレなど、しっかりした味わいの肉料理。和食ならすき焼きやうなぎの蒲焼きなどと。
伊豆マルスラン 2022概要
製品名:伊豆マルスラン 2022
生産本数:632本
ぶどう品種:マルスラン100%
ぶどう産地:静岡県伊豆市 中伊豆志太農場産100%
アルコール分:13.0%
瓶詰め日:2023年11月21日