発酵や熟成を終えたワインは、濾過などのワイン処理を経て、瓶詰めされて皆様の食卓へと届けられます。
単に瓶に詰めるだけの単純な作業のように感じる方もいるかも知れませんが、瓶詰めは地味ながらも非常に大切な工程でもあります。
いかに良い状態でワインをお届けできるかに関わる工程であるだけでなく、商品の顔となるボトル選びやラベル作りなどもあり、細やかな作業が求められます。
今回は実際に出来上がったワインがボトルに詰められ、出荷されるまでをご紹介します。
使用する栓を決める
まず最初に選ぶ必要があるのは、ボトルに使用する栓を決めることです。中伊豆ワイナリーでは多くのワインにスクリューキャップ(ステルヴァンキャップ)を使用しています。
現在では多くの国内のワイナリーでも使用されることが多いステルヴァンキャップですが、中伊豆ワイナリーでは、比較的早い2007年から導入しています。
かつては安価なワインに使われていた印象のあったスクリューキャップですが、メリットが多いため、現在では世界中の多くのワイナリーが導入しています。
栓を開けるのが簡単で再栓でき、ブショネと呼ばれるコルク臭などを防ぐことができるのに加え、コルクと違って乾燥に注意する必要がありません。
また、密閉性に優れていることから、フレッシュさを保ちながらゆっくりとワインが熟成していくことが分かっています。
かつてはその密閉性の高さからワインが酸欠状態になり、還元臭と呼ばれる硫黄のような匂いが発生するのが欠点としてあげられていましたが、現在はさまざまな酸素透過率のステルヴァンキャップも開発され、こうした問題も少なくなってきています。
ワインを印象づけるボトル選び
タンクや樽に入っているワインを瓶詰めするには、そのワインにふさわしいワインボトルを選ぶ必要があります。
ワインボトルには内容量や形に加え、国産のものから輸入のものまで、さまざまな種類がありますが、中伊豆ワイナリーでは内容量が720mlと750mlのワインボトルを主に使用しています。
そして、ワインの種類やぶどう品種によって、肩が張っている「ボルドー型」やなで肩の「ブルゴーニュ型」、すらりと細身の「アルザス型(モーゼル型)」など、ボトルの形の種類を決定します。
さらに、ワインボトルにはさまざまな色のものがあります。
透明、薄いグリーン、濃いグリーン、枯れ葉色(アンティークグリーン)などの中から、長期熟成タイプであれば濃いグリーンや枯れ葉色のボトルに、早いうちに飲む白ワインなどは透明や薄いグリーンのボトルを選択します。
ワインボトルの色や形は、ワインの個性をよりわかりやすく伝えるための手段でもあるのです。
瓶詰め機での瓶詰めの流れ
購入したボトルがワイナリーに届き、ワインが瓶詰めに適した状態になったら、ワイン処理を行った後に瓶詰めを行います。
多くのワイナリーで使われている瓶詰め機はさまざまな機能があり、短時間でたくさんのワインを瓶に詰めることが可能になっています。
ボトルを洗う

まず最初に、届いたボトルを洗うところから始まります。
ボトルはビン詰機の「リンサー」と呼ばれる洗浄機に入り、一度水洗いしてから水切りし、きれいになったものにワインを充塡するよう、細心の注意を払います。
ワインの充塡

きれいになったワインボトルにはまず窒素ガスが吹き込まれ、ビン内の空気が押し出されます。ワインは酸化しやすい性質があり、酸化すると風味が落ちてしまうため、酸素が含まれる空気を押し出し、ビン内を窒素ガスで満たします。
その後充塡機(フィラー)へと送られ、充塡ノズルのある充塡ステーションで、ワインを同じ分量ずつ適切に充塡していきます。
中伊豆ワイナリーでは重力充填(グラビティフロー)のノズルを使用しており、正しい分量のワインが充塡されると自動で充填が止まり、次の段階へとワインの入ったボトルが送られていきます。
スクリューキャップやコルクで栓をする

ワインが充塡されたら、スクリューキャップをかぶせてキャップを閉めます。
ボトルの瓶口周りに酸化を防止するための窒素を噴霧しながら、キャップを瓶口にかぶせて、キャップを上から押さえつけながら締め付けることでスクリューキャップが閉まります。
コルク栓の場合はコルクを1本ずつ打栓し、キャップシールをかぶせて熱を加え、キャップシールを瓶口に密着させます。
ワインが漏れたりしないよう、適切に巻締められるように機器を設定したり、日々の瓶詰め作業の中で確認することは、非常に大切な作業のひとつでもあります。
スクリューキャップの調整はとても繊細で難しく、正しく調整できないとワインの保存や熟成に良くない影響が出てしまうため、常に気を配って調整を行っています。

瓶熟成を行う
ワインによって変わりますが、瓶詰めされた状態のワインをセラーで熟成させてから出荷する場合もあります。
特に赤ワインで長期熟成が必要なものは、ラベルを貼る前の段階でセラーへと移し、ゆっくりとワインを熟成させます。
ラベルを貼る
ワインを出荷する前に、瓶詰め機で瓶詰めされたワインボトルに、ワインの顔でもあるラベルを貼り付けます。
ワインのラベルに記載する情報は法律で決められており、それを表のラベルや裏のラベルにもれなく記載する必要があります。
そうした情報に加え、ワイナリーやワインをイメージするデザインを施したラベルをボトルに貼り付け、ワイナリーのショップや全国各地のワインショップにワインが並びます。
瓶詰めはワインが出荷される前の最後の作業ですが、丹精込めて造ったワインを皆様の元へと送り出す前の大切な工程でもあります。
ワイナリーで育んだ大切なワインを、よりよい状態で皆様にお届けするために、中伊豆ワイナリーではスタッフがすべての工程を都度確認しながら丁寧に行っています。
ワイナリーのスタッフが一丸となって生み出した、中伊豆の風土を閉じ込めた1本を、小さな工程が支えているのです。