10月中旬、収穫を終えたぶどう畑では来年に向けた整備が始まりました。ぶどうを守る大事な役割を終えたグレープガードや防鳥ネットは、来年また活躍してもらえるよう丁寧に整備されていきます。

それと同時に、新たな畑づくりもスタート。これまで畑ではなかった土地を整地するところから、つまり「ゼロからの畑づくり」です。 本記事では、ぶどうの葉が落葉するまでの間に行う作業(整備と準備)と、これまで積み上げてきた知恵と工夫の技術がつまった「独自の垣根式 ぶどう畑づくり」を紹介していきます。


畑の整備

グレープガードのオープン

収穫が終わると、これまでぶどうを雨から守ってくれていたグレープガードをオープンにしていきます。通常はビニールを外し巻き取るスタイルが一般的ですが、ここでは数年前から独自のスタイルを構築。

ビニールの上部を開けるだけでビニール自体は張ったままにする方式を取っています。10ヘクタールに渡る広大な畑のため、ビニールを巻き取る作業を省けるというのは大きな効率化につながります。栽培家のぶどうを守ろうとする熱い想いから成し遂げられた画期的な技術の1つです。


防鳥ネットの収納

ぶどうを守る防鳥ネット

夏の間、甘く熟したぶどうを鳥や小動物から守っていた防鳥ネットも取り外していきます。ここでも独自のスタイルがとられています。通常は防鳥ネットも、外して巻き取る回収方式が一般的ですが、これも広大な畑全部となると膨大な時間と労力がかかります。そこで栽培家はグレープガードのオープン化に続き、新たに「カーテン式防鳥ネット」を開発しました。

また、もともとグレープガードの設置されていない畑は、カーテン式の取り付けが出来ない為、独自に作った2種類のフックでネットを留めています。

こうした畑では、ネットについた葉をきれいに落とし、来年の夏、再び張る際にすぐ使えるよう綺麗に巻き取り作業を行います。


グレープガードのアーチパイプ補修


防風ネット

冬は風が強く、張りっぱなしのビニールへの負担が増します。そこで風を一番強く受ける各畑の段の先頭に防風ネットを設置。風を弱めビニールを守ります。

このようにぶどう収穫後の秋から冬にかけては、葉が自然と落葉するまでの間、来年の準備をしながら畑の整備を進めていきます。


新しい畑づくり― 新圃場

今年は新たに2つの畑を増やしました。どちらもこれまで畑ではなかった土地を整地するところから、つまり「ゼロからの畑づくり」です。


整地と計測


ぶどう列の柱の打ち込みとアンカー設置

打ち込んだ柱は3種類+アンカー。それぞれに違う役割があり、差し込む角度も違うため、垂直計を見ながら手で角度を作り出していきます。


張線

柱が完成したら、次は鋼線を張ります。この畑は全長40メートルあり1列に15本もの鋼線を張る為、スタッフは何度も何度も往復。行っては線を留め帰っては留めるを繰り返し行います。また、この線の中には、独自の線「グレープガードのオープン化」の為の線、そして「カーテン式防鳥ネット」の線も組み込まれています。


オープン式グレープガードの取り付け

ぶどうの実を雨から守る大事な役目のグレープガード。各柱にアーチ型のパイプを取り付け、必要なタイミングでビニールが張れるよう準備しておきます。


カーテン式防鳥ネット線と金具の取り付け

作業はハイペースで進み、1か月もしないうちに新圃場が完成していきました。

独自の線(グレープガードオープン化の線・カーテン式防鳥ネットの線)も組み込んだ完成形の畑


新圃場への植え付けは再来年(2026年)の3月を予定しています。 このようにして、これまで考え実行し、画期的な効率化を果たした技術や工夫が全て詰まった畑が完成しました。畑の1つは、今後期待しているワイン品種の本格生産、もう一つの畑は試験圃場となります。

次回は、いよいよ本剪定です。昨年も「本剪定の奥深い世界」という記事で一度ご紹介していますが、今年は品種ごとの特徴を踏まえた本剪定の仕立てや狙いなど、より深堀した本剪定の世界をご紹介いたします。