11月のブドウ園では、朝日を浴びて輝く色とりどりの紅葉が見られます。紅葉は、ブドウの品種ごとに色が違うなど異なる特徴が顕著に現れ、それぞれが黄色や朱色、赤紫色など、美しく色着いていきます。今回は、シャルドネ、ヤマ・ソービニオン、そしてプティ・ヴェルドに焦点を当て、秋の美しさと栽培家たちの努力について探求します。

 

シャルドネ: 休眠期への移行

シャルドネのブドウ園は、11月になると落葉期から休眠期へ移行します。休眠期とは、新しい芽や葉の成長が一時停止し、ブドウ樹がエネルギーを蓄える時期のことをいいます。その時期に蓄えられたエネルギーは、休眠期に迎える冷たい冬の間に新しい芽が凍結するのを防ぎ、春になったときに、新しい芽が成長を始めるために使われます。

 

シャルドネ: グレープガードと暗渠排水について

シャルドネは9月に収穫を終え、グレープガード(ビニールの保護材で覆われた)の下の葉と、保護材の影響を受けない上の葉の状況が異なる面白い時期です。この現象は、日差しや風、雨から受けるブドウの木への影響がグレープガードがあることで大きく違うことを表しています。

グレープガードは、ブドウの房を実らせ、生長していく過程においても重要な役割を果たしており、雨が果実に直接当たることで、病気のリスクが高まることを防ぎます。

 

雨が多い地域は、本来ブドウの栽培地にはあまり適しません。また、伊豆のような、火山灰土が主体の『黒ぼく(くろぼく)』と言われる土壌も、保水性が高いため、ブドウ栽培に適した土壌とは言えません。

このような土壌では、根が地中深くまで伸びないため、根の80%が地表50㎝までに集中しています。そのため、雨がたくさん降り地表の水分が多くなると、地表近くの根が水分を多く吸い上げ、水っぽいブドウに育ってしまう可能性が高まります。

これを防ぐために用いられるのが、暗渠排水(あんきょはいすい)です。暗渠排水とは、地中の根の高さあたりに穴の開いたパイプを埋めこみ、土にしみ込んだ雨水などをパイプに集めて流すしくみのことです。これにより、圃場からの雨水の排水を効率的に行うことができ、ブドウの根を過度な水分から守る働きをします。

 

ヤマ・ソービニオン: 紅葉の美しさとそのメカニズム

ヤマ・ソービニオンのブドウ園は、紅葉が見頃を迎え、美しい赤色の葉が一面を覆っています。紅葉のメカニズムは興味深いものです。この色鮮やかな変化は、温度と光の影響に関連しています。秋の低温と日照不足が葉のクロロフィル(葉緑素)を分解し、それによって赤や紫の色素が露わになります。

 

ヤマ・ソービニオンの紅葉はブドウ園に魅力的な美しさをもたらし、訪れる人々を魅了します。この品種の特徴的な赤紫色の葉は、ブドウの休眠期と共に寒い冬の訪れるのを知らせてくれるのです。

 

プティ・ヴェルド: ヤマ・ソービニオンとの比較と防鳥ネットの取り外し

プティ・ヴェルドのブドウ園は、ヤマ・ソービニオンとは異なる特性を示しています。ヤマ・ソービニオンと比較すると、プティ・ヴェルドの葉は青い部分を残しつつ、一部が紫色に変色しています。

ヤマ・ソービニオンは、親株にヤマブドウをもっており、ヤマブドウのような赤が鮮やかな紅葉を引き継いでいるのです。この品種ごとの特性の違いが、ブドウ畑の美しいグラデーションとなって人々を魅了します。

 

また、この時季には防鳥ネットの回収作業が行われます。収穫作業がひと段落した、この時季ならではの光景です。防鳥ネットは、鳥によるブドウの被害を防ぐ役割を果たします。

ブドウが熟す時季には、鳥がブドウ粒を狙うことが多く、それを防ぐためにネットが使用されます。防鳥ネットは収穫直前までかけられ、ブドウが健全な状態で収穫される手助けをします。

 

総評: 秋の美しさとブドウ栽培家の努力

ブドウ栽培家たちは、秋の美しい季節になるとブドウ樹の手入れを一旦休め、一面の紅葉を観察しつつ、防鳥ネットや枝を固定するのに使用するバインド線の回収など、圃場の整備を始めます。

その後、落葉した品種から、それぞれの品種の特性に合わせて手入れと管理を行います。シャルドネの休眠期への移行、ヤマ・ソービニオンの紅葉、そしてプティ・ヴェルドの特徴的な紫の色合いがブドウ園を彩ります。

ブドウ栽培家たちは、収穫を終えた後も自然の美しさと科学的な知識を組み合わせ、美味しいワインを生み出すために日々尽力しています。この努力の成果は、私たちが楽しむ美味しいワインに映し出され、ブドウ園の秋の美しさと神秘を、より一層魅力的にしていることでしょう。