中伊豆ワイナリーでは自社農園産のぶどうを中心に、スパークリングワインを造っています。中伊豆の温暖な気候の中で、丹精込めて育んだぶどうの個性が感じられるスパークリングワインを生み出すには、細やかな目配りとテクニックが必要です。この記事では中伊豆ワイナリーでのスパークリングワイン造りについてご紹介します。
スパークリングワインとはどんなワイン?
そもそもスパークリングワインとはどのようなワインを指すかご存知でしょうか。
発泡性のワインではありますが、定義としては、3気圧以上の炭酸ガスが含まれているものをスパークリングワインと呼び、それ以下の気圧のものは「弱発泡性ワイン」に分類されます。
ご存知のように、スパークリングワインは世界各地で造られていますが、産地によって名称もさまざまで、白・赤・ロゼといろいろなものがあります。
なかでもよく知られているのはフランスのシャンパーニュ地方で造られるシャンパーニュや、スペインで造られるカヴァが挙げられます。
これらの名称はその産地でしか名乗れない決まりがあるため、日本で造られるものはスパークリングワインという呼び名になります。
スパークリングワインの造り方
スパークリングワインを造る方法には下記のような方法があります。
・瓶内二次発酵方式
・トランスファー方式
・シャルマ方式
・炭酸ガス注入方式
・田舎方式(メトー・ド・リュラル)
中伊豆ワイナリーで採用している製法はシャンパーニュやカヴァと同じ「瓶内二次発酵方式」です。
きめ細やかな泡が口当たりの良いワインができる方法ですが、手間暇がかかるといわれている製法でもあります。
この方法を選んでいる理由は、質の良いスパークリングワインが生まれることはもちろんですが、他の製法と違い、大きな設備や道具を必要としないことも理由のひとつです。
瓶内二次発酵方式とは
では、瓶内二次発酵方式とはどのような製法なのかを一般的なものをご紹介します。
まず、スティルワイン(一般的な炭酸ガスを含まないワイン)を造るのと同様に、タンクや樽で発酵(一次発酵)を行います。
ここまでの造り方は白ワインを発酵させるときと同じです。(※参照「白ワインの造り方」)
次に、一次発酵を終えたワインを瓶詰めし、そこに酵母と糖分を添加して栓をしてゆっくりと発酵するのを待ちます。これを瓶内二次発酵といいます。
瓶内二次発酵を終えた酵母は澱となって瓶の中に残りますが、瓶の中でワインと一緒に熟成させることでうまみがワインに溶け込んでいきます。
ゆっくりと時間をかけて熟成を終えたワインは、ピュピトルという道具にワインの瓶口を刺すように置き、1日に1/8や1/4ずつ回転させながら瓶の中の澱を瓶口に集めていく作業をします。
澱が瓶口に集まったら、瓶のネック部分を凍らせて栓を抜いて澱を取り除きます。
写真は瓶口を凍らせる冷凍機に澱が溜まったボトルを差し込む様子です。
右上に引き上げたボトルがありますが、瓶口付近が白く凍っているのが見えます。
澱を取り除いたら、甘みのあるリキュールを加えてコルク栓をし、針金で栓を固定したら、あとはラベルを貼って出荷となります。
中伊豆ワイナリーでは「伊豆スパークリングワイン爽輝」が造られています。早い時期に収穫される、酸の高いシャルドネと、爽やかで甘い香りが特徴の信濃リースリングから造られたワインを使用したものです。瓶内二次発酵に最低1年をかけ、収穫して約2年後にスパークリングワインとしてリリースしています。
スパークリングワイン造りで気を遣う作業とは
中伊豆ワイナリーでのスパークリングワイン造りで特に気を遣っているのは、瓶内二次発酵のときに加える「酵母だね」を作るところです。
いかに元気な酵母を添加できるかで、ワインの出来が決まってしまうからです。
瓶の中で発酵が始まるときの酵母菌数がとても重要で、少なすぎると発酵せず、多すぎると一気に発酵してしまうため、泡のキメが粗くなってしまいます。
そのため、ちょうどいい数の酵母菌を入れることが肝心になります。
スパークリングワインを造り始めたばかりの頃はそこがうまくいかず、発酵がすぐ止まってしまって甘い微発泡のものになってしまったり、逆に圧力が強すぎて瓶内二次発酵用に打った王冠が吹き飛んでしまうなんていうこともありました。
酵母だねを作るときのさじ加減はそうした意味でも非常に重要で、おいしいスパークリングワインを生むための大切な条件になります。
甘辛度を決定する「ドサージュ」
スパークリングワインは澱を抜いたあとに、目減り分の液量を補うことと、味わいを調整するために甘いリキュールなどの糖分を加えることがあります。
これをフランス語では「ドサージュ(門出のリキュール)」といいますが、この量でスパークリングワインの甘辛度が変わります。
ワイン好きの方のなかには、ドサージュをどれくらいしているかで購入するかどうかを決める方もいるかと思いますが、ドサージュは味わいに厚みを与えるため、少なければいいというものでもないのです。
中伊豆ワイナリーでは2021年から必要な場合にはドサージュを行っています。
ドサージュの量は年によって変わりますが、2021年は4g/L分の糖分を添加しています。
シャンパーニュの甘辛度に当てはめると、エクストラ・ブリュットにあたる量を添加していることになります。
味わいが弱いヴィンテージの場合でも、少量のドサージュをすることで厚みを増し、美味しいスパークリングワインに仕上がるのです。
中伊豆のさわやかな風を感じるスパークリングワインをどうぞ
中伊豆ワイナリーの農園で造られたぶどうを中心に、長い時間と手間をかけて造られるスパークリングワインは、上質なぶどうに磨きをかけて閉じ込めた一本です。
細やかに気を遣い、手塩にかけたスパークリングワインをぜひご賞味ください。