ブドウの栽培において、気温や病気などの要因はブドウの成長と品質に大きな影響を与えます。2023年9月14日、白ブドウの収穫を終え、これから黒ブドウの収穫時期に差し掛かるこの時季は、栽培家の目にはどのように映っているのでしょうか。今回は、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、プティ・ヴェルド、ヤマ・ソービニオン、房晩腐病に焦点を当て、最新の情報とブドウ栽培における重要なポイントを探求します。
カベルネ・ソーヴィニヨン: ヴェレゾン後期の成長
近年の温暖化の影響で黒ブドウの着色不良が全国的に問題になっています。黒ブドウは成長とともに着色し、黒くなりますが、気温が高い場合、色がしっかりつかない場合があります。ここ中伊豆でも例外ではありません。黒ブドウの成長(着色)を促進する最適な気温は摂氏18~24℃です。今年のカベルネ・ソーヴィニヨンのヴェレゾン前期にあたる8月後半から9月中旬において、中伊豆では24℃を下回る日が多く続いた結果、近年では、ここ数年と比較すると着色が良好です。
カベルネ・ソーヴィニヨンは、深みのある色合いとしっかりとしたタンニンが特徴のブドウです。現在、弊社のワインにおいて、カベルネ・ソーヴィニヨンを単一品種のワインとして商品化はしておりませんが、2023年ヴィンテージのワインの品質に良い影響を及ぼすことを期待しています。
シャルドネ: 来年の芽(花芽)の成長
ブドウは実をつけている間にも、翌年の芽を作り、準備を整えています。シャルドネの来年の芽(花芽)は6~7月に形成され、生育期後半から落葉期まで枝に養分を蓄えます。これは貯蔵養分といい来年の芽が発芽し成長するために欠かせない養分です。
今年に入って伸びた新しく柔らかい枝は、だんだんと緑色から茶色に代わり木化していきます。
これを『登熟(とうじゅく)』といい、新梢が基部から先端へ順に登るように成熟していくことからそう呼ばれます。本格的な冬を迎える前に、ブドウ樹は登熟をして冬に向けて備えをし、11月頃からブドウは休眠期にはいります。冬の寒さもブドウにはかかせませんが、その話は次回以降に。
プティ・ヴェルド: 着色が安定して良好
プティ・ヴェルドは熟期が遅い品種で、中伊豆でも安定した着色が見られています。収穫まで約1か月(※9月14日現在)ありますが、現時点では順調に成長しています。
晩腐病(ばんぷびょう): ブドウの難敵
ブドウの病気の中でも、晩腐病(正式にはおそぐされ病)は特に防除が難しい病気です。病原菌は6月の開花期に発生しますが、発病はヴェレゾン期から収穫期にかけてと、発病までにタイムラグがあります。
晩腐病は、一度発生すると、一気に広がるため早期発見と入念な防除が必要です。晩腐病にかかった病果は干しブドウ状になり、糖度は上がりますが、ワインの色調や香りに悪影響を及ぼす可能性があるので、収穫前に腐敗果をハサミで切り落とし、更に収穫時にも取り除きます。
ヤマ・ソービニオン: 着色の安定性と美しい紅葉
ヴェレゾン後期のヤマ・ソービニオンも、着色の安定性に関して良好な状態です。
ヤマ・ソービニオンの葉はまだ健康な緑色を保っていますが、収穫後には赤色や紫色が混ざった紅葉をします。その美しい紅葉は11月後半に見られます。
まとめ
ブドウ栽培において、気象条件や病気の発生は大きな影響を及ぼします。2023年9月14日の状況では、多くの品種が順調に成長しており、収穫時には良質なブドウが期待されます。ただし、房晩腐病のような病気には早期の対策が必須です。栽培家は引き続きブドウの健康と品質に注意を払い、美味しいワインの製造に向けて努力を続けます。